庭造りのコツ

林と草原の境目

いわさきちひろ絵本美術館  日本庭園は奥深い山の中をイメージして作られることが多いように思われます。そう言う意味で、純然たる日本庭園は今の時代には少し重たく、暗い印象になってしまいます。
 日本の雑木林と草原の境目、その辺りの風景を参考にすると、現代の感覚で心地よい庭を作ることができます。
 具体的には落葉樹を中心にして照葉樹、針葉樹を植え、足元を中低木で囲います。
 落葉樹は雑木などと呼ばれ、日本庭園では松や梅など主役の樹木の引き立て役にすぎませんでしたが、そのしなやかで繊細な姿と風で軽やかに揺れる葉先、さらに紅葉をする種類が多いことなどで今は主役の座についています。落葉樹はあまり多くの種類を植え込むより、同じ種類を繰り返し使ったほうがかえって印象的な庭になります。
 シャラ、コナラ、ヤマボウシなどに人気があります。これらの木は丈夫なこともあり、都会のお洒落なレストランの窓先などに植えられているのをよく見かけます。
 春先に花を楽しみたいのならハクレン、ハナミズキ、スオウ、カラスモクレン、ヤエザクラ、なども良いのではないでしょうか。
 照葉樹は花のない真冬に楽しめるツバキ、香りを楽しむキンモクセイが2大人気種です。
針葉樹は巨木になる種類が多くあまりおすすめできませんが、今は様々なタイプがあり大きさも手ごろなコニファに人気が集中しています。色、形ともにバラエティーを楽しむことができます。


松竹梅

梅  マツ、タケ、ウメは日本人が大好きな樹木でしたが、人気は少し下降線を辿っています。個性が強すぎて前述の樹種とはあまり馴染まないことが原因だと思われます。
 しかし、やはりその美しさには捨てがたい味があり、全体に和風の庭園を目指すのなら主役として植えて見るのも良いのではないでしょうか。
 ただしタケは見境なく増え続け、隣地にまで進出し迷惑をかけるおそれもあります。植木屋さんとその辺をよく相談してから植えてください。
 同様の立場にある樹種としてはカイドウ、モモ、モミジ、カキなどがあります。
 前述の落葉樹中心の庭でも、1本くらいなら植えてもうまく馴染みます。

 
中低木を再考する

紫陽花  中低木と言われてまず浮かぶのはツツジとサツキでしょう。誰でもすぐに思い浮かぶということはすでに飽きが来ているということです。
 落葉樹中心の庭に馴染む中低木はやはり同じ落葉樹であるドウダンです。小さくても秋には美しい赤に紅葉します。
 最近はツツジ、サツキ以外ではアシビ、タマツゲ、小型のコニファなどを良く見かけますが、個人的にはしばらく忘れ去られていた様々な中低木の見直しの時期に来ているのではないかと思っています。
 高木の落葉樹は同じ樹種でそろえたほうが印象的であると書きましたが、こちらは逆に多くの種類を混在させるのも面白いのではないでしょうか。修学院離宮の大刈り込みのようにです。
 修学院離宮とはまったく樹種が違いますが、忘れ去られている樹種とはアジサイ、ユキヤナギ、キンシバイ、レンギョウ、ヤマブキ、コデマリ、ハギなどの中低木です。
 センリョウやマンリョウ、ボタン、ムラサキシキブなど和風の低木も小型であるという点で落葉樹中心の庭にも合います。
 シャクヤクやシラン、エビネなどの宿根草も毎年季節に花を楽しむ事ができ、捨てがたい味わいがあります。
 勇気が必要だと思いますが、私が個人的に大変気に入っている宿根草にススキがあります。何度か植えてみましたが、評判は悪くなかったです。いかがでしょうか。


樹木を植える場所

姫沙羅  ほとんどの場合、最初に庭作りに取り掛かるとき、庭の中央に芝生を敷き、周囲に高木、その手前に中低木を植えます。こうすることによって、すべての樹木を眺めることができるからだと思われます。
 しかし、思い切って芝生の庭の中央に、落葉樹などの株立ちを植えたり3、4本の寄せ植えを行うと思いがけない効果が生じます。平坦だった庭が俄かに息づき、あたかも高原の林の中に家が建っているような錯覚に陥るのです。
 そもそも自然では芝生と樹木が整然と区画されている事はなく、中央に樹木を植えることでその不自然さが払拭される事が理由なのではないかと思います。
 これは私の庭園デザインの企業秘密の一つでした。とは言っても単純すぎて誰にでもすぐに真似をすることは出来ますが。

 
植え方のリズム

 同種、異種の同じ高さの樹木を植えつけるときもう一つ大切な植え方の秘訣があります。  均一に、同じリズムでは植えない、ということです。
 並木のように一本調子で植えても樹木の自然な美しさを引き出すことはできません。集中させたり、まばらにしたりの心地よいリズムが必用なのです。同じ種類の樹木を同じ本数植えても、そう計算しているかいないかでまったく違う印象の庭になります。当たり前のことのように思えますが、通りすがりに実際に植栽されたばかりの庭を見ますと、プロの手で植えられているにもかかわらずそうされていない例を多く見ます。
 しかし単純に上手にリズムを作りばらつきを重視しろと言っても、多少のセンスは必要になります。自信がなかったらお手伝いさせていただきます。


巾50cmの雑木林

これは私の設計ではありません  自分の家は敷地が小さいから庭作りなどはほとんど不可能だと思っている人も多いかもしれません。
 しかし、ある程度の日当りさえ確保でき、50cmの奥行のスペースがあれば樹木を植えることができます。しかも、落葉樹などを上手に配すれば雑木林の雰囲気を演出する事さえ可能です。
 あきらめずにチャレンジしてみてください。そんな小さなスペースでも、樹木があるのとないのとでは大違いです。樹木が美しいばかりではなく、窓からの風景も変わりますし、建物そのものが引き立って見えます。
 こちらでも分からないことがありましたらいつでも気軽に相談してください。

少なめに植える

 庭を新規に作ろうとするときは隅々までびっしりと植え込むのではなく、将来植え足す事の可能なスペースを残しておく事をおすすめします。自分の庭を持つとそれまでまったく庭造りに興味のなかった人が、にわかに庭作りに目覚めてしまったりすることが多いからです。自分だけの庭を持つと、意識が変わるのです。
 そうなると植木市や花屋などで気に入った木の苗を見つけると買って帰って自分の庭に植えたくなります。そのためのスペースをあらかじめ用意しておくことをおすすめしているわけです。


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